しろいはなび

twitterでは手狭に感じてきたのでブログを始めてみました。

[レビュー]Rez

わたしがもっとも好きなゲームのひとつにRez HDというものがあります。わたしがRezを知るきっかけはなんとも迂遠なもので説明しづらいのですが、小さい頃に見た日本テレビ報道特集です。月曜日に「世界まる見え」という海外のテレビプログラムを面白おかしく紹介する番組のあとにやっていた、特集番組でした。毎週色々なちょっと変わった内容の特集を組んでいたのですが、その週は昨今のゲーム市場についての特集でした。当時はドリームキャストが初めてインターネットに対応した機器としてモデムが内蔵されていたり、某秋元の仕掛けのもと、湯川専務が登場する物語仕立てのCMが流されるなど、頑張っていたのですが、結局キラーソフトに恵まれずに没落して以後、ノウハウがXboxに吸収され、MicrosoftSony、Nintendoの三強の時代を迎えるわけです。

 

そのときに、不思議なソフトの紹介がされていました。Rezというゲームで、いままでのゲームとはまったく違う、気持ちが昂ぶるように設計されたゲームということで、その開発の裏側を取材していました。開発責任者のイメージするゲーム像がチームになかなか理解されずに、苦労している様子が写されていました。

その映像は数年後、大学時代にニコニコ動画で再開を果たします。そのころは小さなころと違い、芸術を学ぶ学生として、なんとか芸術の本質を掴もうとしていました。図書館にこもっては(夏休みは江古田の図書館に通い、写真集を片っ端から読み始め、さらに毎日10冊の写真集を借りだしては家に持ち帰り、また次の日に返却をしてという生活を送ったことがあります。世の中には本当に多種多様な写真で溢れており、その膨大なデータベースに圧倒された記憶だけが残っています)本を読んでいました。そのなかできっかけは覚えていないのですが、前述の動画に再開しました。

 

その開発者は水口哲也氏でした。水口哲也は大学に入った当初に、文芸学科のゼミ誌で見かけました。文芸学科に入ったあとにゲームクリエイターになった人間がいると知り、驚きました。その記事には大学でやったこと、ということを書いていたのがとても印象的でした。彼は、毎日映画を見て、その何が良かったのか、何が面白かったのか、どこに感動したのか、もしくは、何がつまらなかったのか、何が気に入らなかったのか、それらを書き出して、自分の嗜好はいったいどのようなものなのか、そして世間が望んでいるものは何なのか、ということを彫りだしたというようなことが書かれていました。

確かに学部時代、とくに所沢に通っていた時代は、自分がいったい何が好きなのか、芸術とはいったいなにを表現しているのか、表現できるのか、どのような表現方法を取ればどのように表現が可能なのか、ということは芸術という膨大な蓄積を前にして、ただただ呆然とするしかなかったように思います。わたしが芸術についておぼろげながら、自分なりの解釈ができるようになったのは院生時代も終わりのころでした。

 

・長くなってしまったので、章を区切ります。Rezについて書きましょう。Rezは元々ドリームキャスト用のソフトとして開発され、のちにPS2でも発売されました。数年後にXbox 360でHD対応版としてRez HDをオンデマンドで配信しました。わたしがプレイしたのはオンデマンド版です。

Rezはシンプルなシューティングゲームの体裁を取っています。画面はどこか懐かしさを感じさせるワイヤーフレームを基調としています。ビジュアライズ化された電脳空間に蔓延るウィルスを打ち落としファイヤーウォールを突破しながら、システムの中枢へとアクセスを目指すというのがゲームの目的です。

増えすぎた人口、整理できないほど広がったネットワーク社会。
ネット犯罪の増加に行き詰まったネットワークシステム。
それを打開すべく作られた新しいシステムの中枢「PROJECT-K」と、
「eden」の誕生によって、 システムが完成に近づいていった。
しかし、あまりの情報の量に「eden」は自分の存在、すべての行為への疑問、
そして矛盾によってスリープしてしまう。
プレイヤーは、システムによってビジュアライズされた電脳空間に「eden」を探す旅に出る。
ハッキングによって、電脳空間は様々な形状に変化していく。
ウイルスによって侵されたファイアウォールをハッキングし、「eden」を目覚めさせることができるか。

Rezとは (レズとは) [単語記事] - ニコニコ大百科



このゲームの特筆すべき点は、標的をロックオンしたり破壊することによって流れるSEやエフェクトがBGMと融合し特有のグルーブ感を演出するというものです。この「音楽と光(エフェクト)をゲームに融合させる」というのは水口氏がずっと追い求めているテーマのようです。

水口哲也がこのテーマを思いつくきっかけになったのは1997年のスイスで行なわれたテクノフェス「ストリートパレード」のことです。多くの人たちが音楽と光や色に合わせて踊っている光景を見て「凄いものが循環している」と感銘を受けたそうです。また友人アフリカのケニヤの人たちが路上でライブ(のような宴会)を開いている映像を見たことがきっかけとなったそうです。誰かがリズムを打ち鳴らすとそれに反応したほかの人たちが別の音を鳴らしたり歌い出したりし興奮しグルーブしていく光景に衝撃を受けたそうです。

彼は、これらの現象をゲームにできないかと考え、「コール&レスポンス(呼びかけと反応)」「アクト&リアクト(能動と受動)」によって共鳴と共振が起こることを発見し、その体験をゲームにしたものがRezです。水口氏は講演のなかで

 

「「凄い涙を流す感動からちょっとした感動まで色々あると思いますが、気持ちの流れってのは見えないプロセスですよね。見えないものを可視化する、気持ちの流れを設計する、体験をデザインするつまりはコード化する。この気持の化学反応を作るってのが、僕達のやっていることなんじゃないかなあ。ゲームって何かを達成したい、そして達成したものの周りには色んな物がくっついてくる。それを建築家のように設計していくのが我々の役目なんじゃないかな」と語っています。また「「なぜ人間はこれが面白いのか」「なぜ人間はそれが楽しいのか」「なぜ人間はあれが気持ちいいのか」という疑問を投げかけ続け、自身のフォームを形作っていくことが重要だとしています。」

『Rez』や『スペースチャンネル5』はどうやって生まれたのか?水口氏が語る「なぜ」から始まる革新的なゲーム作り | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

 

 とも言っていますが、それはまさに6年前のゼミ誌で見たインタビューと同様のことを言っていたのです。わたしはとても驚きました。


・水口氏は日芸文芸学科卒業なのですがゼミは武邑光裕というメディア美学者の方らしいです。(武邑氏も日芸卒業らしいのだけれど、どうしてこんなにも面白い人間が日芸から出てきたのか不思議でならない。あのような教育でこのような人物が生まれるのだろうか)彼のことは院生のときに調べ、少し本を読みました。そして、わたしの嗜好は間違っていなかったのだ、と思うに至りました。まず入学当初は青木敬士先生a.k.aアミッドPの授業や本(世界はゴミ箱のなかに)が好きになり、水口哲也が気になりました。そして、院生のときに武邑光裕氏の本に行き着きました。彼の文体は魔術的でアングラな怪しい雰囲気が醸し出されていて、すごく好きでした。UFOやニューエイジのような似非科学のようなもの、アイソレーションタンクなどの精神世界の話など、とても怪しく、そして、とても魅力的なことを次々に語っています。それはわたしが中学生のときに雷のような感銘を受けたアニメlainのなかでも語られていたことだったのです。
わたしは武邑光裕の考える軸、メディア美学にようやく辿り着いたという思いがしました。これが院生の終わりで、時間がとてもかかってしまいました。どうしたらいいのでしょうか。誰か教えてください。

 

Rezに戻ります。Rezは光と音のゲームの融合がテーマとなっています。そのシステム面においてもとても好きなゲームなのですが、設定もとても好きなのです。Rezは全5ステージ構成になっていて、最初の4ステージは、四大文明をモチーフにしたステージがワイヤーフレームで描かれます。そして、最終面は地球創世の物語をモチーフにステージが進んでいき、母なる大地へと帰って行く、という物語が描かれているのです。

高度な情報社会を四大文明と地球の創世になぞらえる、それはまさしくアップルがまだ海賊であったころ、IBMという体制の組織からコンピューターを奪取し、世界平和のために解放しようとしていたあの頃の、コンピューターやインターネットが精神世界と深く結びついていた時代に思いを馳せさせます。わたしはあのころのニューエイジの雰囲気がとても好きなのです。わたしがRezを好きなことの理由の一つはそこにあります。

本当に長くなってしまいましたが、好きなことを語るのはとても楽しいですね。

 

Rez

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Rez

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チャイルド オブ エデン

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